「小さい子どもはしんどいことを表現できないので不安」「容態が急変することがあり、こわい」「休みをとれないような職場が悪い」「子どもがかわいそう」「うつる」「おとながうつると重症化する」など… 子どもの病気というと、こんなマイナスイメージがどんどん出てきます。
保育のプロでも、子育て支援にかかわるものでも病気の子どもをみることは大変だから保護者がしてください、特に母親ががんばって!それが子どものためなのだから、と語られているように感じました。大変なときは助けてもらおう、助けてと声をあげよう、と一方の子育て支援活動では伝えているのに、子どもの病気となると、大変なことは、親にもどす、という構図がみえてきました。 親の役割を強化したままで、 仕事と子育ての両立を支えるものとしてのみ、病児保育が取りざたされることに、どこか違和感を覚えます。
もちろん、子育てしながら働きやすい職場の環境づくりをめざすことは大切で、社会的課題でもあるのですが、それだけでは、病児保育は職場の環境改善のためのサービスになってしまいます。それよりも、大変なことは母親に任せる、責任は母親にあるという社会の意識変革に働きかけることのほうがより重要と考えたいです。
仕事を休んでイライラ、病気のことがわからずオロオロの親だっているでしょう。子育ては待ったなし、日々大変なものです。子どもの視点からみても、最善の過ごし方は、親のそばにいることとは限らないでしょう。子どもが病気のときに休める職場づくりは、子どもが病気のときくらい、休んで子どものそばにいなさいというメッセージにもとられかねないように思います。
子どもは大切、だからこそ、子育て中だって自分らしくいたいと思うことはわがままでしょうか。休みたい自分、仕事に行きたい自分、だれかに頼りたい自分、どれを選んでもいい環境をつくるのが病児保育の役割ではないかと思います。
人はだれでも病気になります。特に子どもは病気をしながら大きくなるともいわれています。そこの大変さを支えようという活動はなかなか見当たらず不安な思いをされてきた保護者もたくさんいることでしょう。病児の安心した表情や笑顔とともに歩んできたゆりかごネットワークは、子どもから学んだたくさんのことを今後の活動に活かし、子育てしやすい社会づくりに取り組みたいと思います。病気のときでも、どんなときでも、みんなで子育てをめざします。ご支援のほど、よろしくお願いします。
代表理事 奥村仁美